公共交通機関がAI化したとき、交通インフラは“商品”になる

自動車の自動運転が注目されていますが、実は列車などの公共交通機関も、着々と未来へ向かっています。2022年10月、JR東日本は東京の大動脈である山手線で自動運転の実証実験を行いました。運転手は各駅を出発する際にボタンを押すだけという本格的な実験で、メディアにも大きく取り上げられています。

公共交通機関のAI化と自動車の自動運転の違い

今回の山手線の実験は、加速や減速、停車はすべてAIが行います。JR東日本の今後の目標としては、2028年頃にすべての山手線の列車に自動運転を設置する目標を掲げています。その後2030年頃までに運転士だけが乗車するワンマン列車の実現(2022年現在は車掌が乗車しています)、将来的には運転士も乗車せず、すべて自動運転で対応する体制を目指しています。

自動車の自動運転も着々と進むなか、公共交通機関のAI化はどのような社会変化を実現するのでしょうか。まずいえるのは人材不足問題への効果です。過密ダイヤへの対応や深夜運転の対応はAIによって自動化されていきます。山手線は既に自動化しているゆりかもめ(東京の湾岸地域を走る鉄道)とは異なり、信号や人間による線路侵入などのリスクがあります。

現時点ではこの部分は人的なフォローが必要ですが、自動車でも緊急停止の技術が既に確立されており、自動化するのもそう長い未来ではないでしょう。

稼働した公共交通機関×AIは貴重な輸出商品になる?

1960年代の日本で誕生した新幹線は高度経済成長の波に乗り、世界各地に輸出されるようになりました。これは車体だけを輸出するわけではなく、運用ノウハウや運転士の技術、世界一といわれる接遇、清掃といったホスピタリティの品質にいたるまで、ワンストップパッケージとしての輸出です。近い将来、公共交通機関×AIによって実現した自動運転は、そのまま海外に輸出できるメイド・イン・ジャパンの商品になると期待されています。新幹線の技術が世界に広がる技術のひとつとして評価される可能性はもとより、運行時刻の正確さは世界中を驚かせるはずです。

時刻表から3分遅れるとアナウンスがお詫びをする文化は、世界中探しても日本だけといわれます。それほど日本における公共交通機関の運行技術は世界でも高品質です。AIによる自動運転を皮切りに、改めて日本の運行技術を世界中に示すきっかけになると考えられます。現時点でも高い人気がある日本のインフラですが、お寺や桜を見に来るように、世界中から自動運転を見にくる風景が当たり前になっていくかもしれません。

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