
千葉大学発医療スタートアップSmart119社は、千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学と人工知能(AI)医学と共同で、機械学習を用いたICU(集中治療室)入室患者の「生命予後」「在室日数」を予測するためのアルゴリズムを確立。その精度検証、クラスター解析による死亡リスク要因の解明を目指す研究を実施しました。また、研究成果をまとめた研究論文(筆頭著者:岩瀬信哉、責任著者:中田孝明)が国際科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。
Edge POINT
- ICUの「生命予後」「1週間以内の生存退室」「2週間以上の生存退室」を予測するアルゴリズムを確立
- 精度検証、死亡リスク要因の解明を目指す研究を実施
- 死亡率予測アルゴリズムにおいて重要な変数を特定するための解析結果は画期的な成果
ICU患者の死亡率や残室期間を予測する研究を実施
千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学の岩瀬信哉特任助教らは、データを用いたICU(集中治療室)入室患者の「生命予後」「1週間以内の生存退室」「2週間以上の生存退室」を予測するためのアルゴリズム確立とその精度検証、死亡リスク要因の解明を目指す研究を実施しました。
研究では、2010年11月~2019年3月までの期間に千葉大学医学部附属病院のICUに入院した約1万2800人の患者のICU入室時の電子カルテデータを使用。そのうち機械学習用サンプル80%(約1万200人)を利用して分類アルゴリズム・モデルを設計し、さらにテスト用サンプル20%(約2600人)で検証を実施しました。検証では、「ランダムフォレスト(RF)」をはじめとする3種類の機械学習手法を採用しました。
検証の結果、100種類以上に及ぶICU入室時の各種バイタルデータから、ICU患者の生命予後や在室日数を高い精度で予測できることが確認されました。他の機械学習手法を用いたケースでも高い予測値を示すことが判明しています。
また、機械学習による予測やUMAP(*)によるクラスター解析において、患者の疾患内容に関わらず、「LDH(乳酸脱水素酵素)」の血中濃度がICU入室患者の生命予後および在室日数に強く影響を与える重要な因子であることを見出しました。
従来、機械学習を用いてICU入室患者の死亡率を高い精度で予測する研究例は多数報告されてきましたが、死亡率予測アルゴリズムにおいて重要な変数を特定するための解析結果は報告が極めて少ないことから、画期的な成果と言えるということです。
*Uniform Manifold Approximation and Projection 機械学習による非線形次元削減手法の一つ。

リリース:PR TIMES