
会社経営者ではなくとも様々な仕事をしていると、一度は契約書で「火傷」をしたことが無いでしょうか。契約締結時は「そんなこと起こらないよ」と軽視した事項が問題となり、先方とトラブルになったり、自社側が損害を受ける状況です。いま、契約書領域にも、AIを活用したサービスが広がっています。
1、契約書は本来誰の目を通すべきか
契約書は契約者(契約社)同意事項のほか、契約時には想定できぬトラブルがあった場合どのような対応するかというリスクヘッジを記載します。AIのメディアですので、AI機能を搭載した100万円のサービス受託を締結したときの記載事項を考えてみましょう。
契約 | 記載事項 |
---|---|
基本契約 | サービスの構成・納期・納期後の版権(所有権) |
瑕疵物の納品 | 納品物が一定のクオリティに至っていなかったときの対応 |
守秘義務(NDA) | 契約の対外公表禁止 |
法令遵守 | 受託においては法律・条例を守りますという合意 |
解除事項 | 契約解除ができるときの条件および期間設定 |
これらの事項は他のAIサービスを委託・受託するときはどのような合意条項が必要で、どのようなトラブルが考えられるかの客観的データが大切になります。契約書の締結において、活躍するのは弁護士です。弁護士は訴訟の代理人としての印象が強い専門家ですが、これら契約書をチェックし、問題点が無いとお墨付きを与えるのも大切な仕事です。社外にいる弁護士事務所に依頼することもあれば、社内の法務部に弁護士を配置し、恒常的に発生する契約事項に対応する体制の会社もあります。
2、契約書でAIが活躍する意味
過去の契約書で締結された内容はAIが読み込むことができます。よってAIは契約書を見たときに「この契約書では〇〇について記載が無い。また××においての記載が誤解を生む恐れが高い」と判断することができます。
現在普及している契約書×AIサービスは、この判断を数分で行うことが出来るのが魅力です。社外にいる弁護士に依頼する場合はもちろん、社内に弁護士を抱える場合も人件費は高くなります。経費削減という効果も期待できるでしょう。また、契約書の締結が遅れると契約自体が無くなってしまうことも多いため、多忙な弁護士を介している時間が取れないというのもサービスが登場する前の強い悩みでした。時間的なコストを解決したというのも、これだけのスピードがサービスが浸透していった要因と捉えられます。
なお、契約書×AIサービスは弁護士の独占業務を弁護士以外が出来ないという弁護士法(72条)に違反しているのではないかという指摘が2022年6月に指摘され、大きな議論を呼んでいることを付記します。サービス開発においては当然リーガルチェックが徹底されているため、サービス停止などの大事にはならないと思いますが、それだけ革新的なサービスという話題を呼ぶ一助になっていきそうです。